URBAN TALE - Signs of Times

Label : MARQUEE-INC. | Cat-No. : MICP-10350 | Release Date : 2003.01.22

URBAN TALE - Signs of Times1.Starship of Giants 2. Hello Light 3. Houdini's Eyes 4. Still Strong 5. Son of a Gun (Heroes Of The World) 6. Open Your Heart 7. Captain of Clouds 8. Don't You Know 9. Beggar And Thief 10. The Morning Smoke 11. Monsters 12. Mary 13. Today I'll Change My Life *
* : Japanese Bonus Track

フィンランド出身のメロディアス・ハードロックバンドの待望の 2nd アルバム。デビューアルバムでは JOURNEY を始めとするかつての産業ロックの影響下にある洗練されたメロディアスな作風になっていたが、今作ではその産業ロック的なアプローチを基本としつつも楽曲の方向性やアレンジにおいて新生面を強く打ち出している。

この手のメロディアスな作品を語る上でいかにゴージャスな音作りをできるかによって作品のクオリティが決まるみたいなことを言う人間もいるが、彼らの場合、透明感溢れるメロディアスな楽曲をそれに見合った練り込まれたプロダクションで聴かせるという意味では前作の時点である程度完成された作品を作り上げていただけに、今作では前作と同じ方法論で作っていればリスナーの期待には十分応えられたのかもしれないが、彼らのアーティストとしての向上心がそれを良しとしなかったのか、特定の枠に捕われない新しい URBAN TALE サウンドを披露している。

プロダクションの面においてはリヴァーブを控えめした生々しい音作りを心掛けたのか、結果的に前作に比べギターを前面に押し出した結果、楽曲の持つロック色を強調した良い意味でのラフなサウンドになっている。また、前作ではキーボードアレンジが楽曲の性格を決定付ける上で要になっていたが、今作では透明感を演出するウェットな音色使いは一歩後退し、デジタルかつモダンな音色を大胆に導入しており、結果的にはこのキーボードアレンジの変化が方向性の変化の揺れ幅を大きくしているのではないかと思う。

そのように音の面では大幅な進化を遂げているのだが、変わっていないものが一つだけある。それはキモ・ブロムのヴォーカルだ。モダンであろうが伝統的なメロディアスな音であろうが彼の程よく掠れた深みのある歌声が乗ることで表面的な変化を超えた URBAN TALE の世界感を演出しているのではないだろうか。そういう意味では根底に流れるロマンティックな美旋律は今作でも普遍であると言えるだろうし、音作りの面で進化を遂げたことでそのメロディをよりダイナミックかつストレートに聴き手に伝えることに成功したといって良いだろう。

音作りの面での変化にばかり着目してしまったが、楽曲の面においてもよりクオリティ、ヴァリエーションの双方において前作を軽く凌駕するレベルに到達している。アルバムは前作の延長線上にある爽快なメロディをハードエッジな疾走感を伴って聴かせることで聴き手を一気に自身の世界へと誘う "Starship Of Giants" で幕を開けるが、この1曲だけでも前作のどの曲よりも数段上のレベルに到達していることは明白である。続いて曲名から想起される陽性のメロディを軽快なテンポに乗せて聴かせる "Hello Lights!", 憂いに満ちたメロディラインと風変わりなサビメロを組み合わせることで従来のらしさと新機軸を見事に融合した "Houdini's Eyes", ロマンティックなメロディをストリングスの調べに乗せて優雅に聴かせるバラード "Still Strong" と1曲目で掴んだ聴き手を離さないだけの多彩かつ確かなクオリティを持った楽曲を立て続けに聴かせてくれる。

そして中盤は一点の曇りもない清々しい青空の如きゆったりと流れる爽快なサビメロが秀悦な "Son Of The Gun"に始まり、 1st 収録の名曲 "Passion Takes Over" を彷彿させる躍動感に満ち溢れながらも洗練されたグルーヴとコーラスの空気感が印象的な "Open Your Heart", 70年代ハードロック的な熱いヴァイブと壮大なメロディをストリングスアレンジで優雅に包み込んだ "Captain Of Clouds", 休日に目を覚まし窓の外を見ると雨だったというシチュエーションにハマりそうな憂鬱な雰囲気を洗練されたアレンジで聴かせるアダルトなポップチューン "Don't You Know" と、それぞれ1曲だけでもアルバムのハイライトになるであろう楽曲が立て続けに待ち構えており、良い意味で聴き手は集中力を強いられることになる。

後半はここまでの流れとは一転してゴシック的なダークさすら感じられる抑揚を抑えたメロディラインが静のドラマを生み出す "Beggar And Thief" に始まり、続いてもシンプルかつキャッチーなポップロックにドラムンベースを効果的に用いることでより印象的なものに仕上げた "Morning Smoke", 前曲ではアクセントに用いられていたドラムンベースを始めとするエレクトロニクスを楽曲の中心に据えダイナミックな展開で爆発力のあるメロディを聴かせる "Monsters" と実験性の強い楽曲で固められている。中盤までの流れが完璧なだけに、ヘタするとここまでの流れを立ち切ってしまう危険性すらあるのだが、どの曲にしても単体の楽曲としてのクオリティの高さもさることながら、アルバム全体を通して聴いた際に楽曲のバリエーションの広げるための方法論の一つとして確立されている感すら感じられるのは見事としか言いようがない。

そして人間の誰もが持つ脆さを表現したかのような儚げな雰囲気とキモ・ブロムの深みのあるヴォーカルが胸を打つバラード "Mary" で聴き手の心に余韻を残したままアルバムは幕を閉じる。日本盤にはボーナストラックとして "Today I'll Change My Life" なる曲が収められているが、ポジティヴな爽快さは感じられるものの、メロディ自体は練り不足の感の否めなず、いかにもボーナストラックといった出来の曲だが、アルバムの質を下げるほどには至っていない。

個人的には今作を聴き終えてデビュー作で聴かせた美点を維持しつつも根底に流れるロックバンドとしての血を具現化して聴かせているという意味では FAIR WARNING におけるデビュー作から "RAINMAKER" への変化に通じるものを感じた。もしかしたらデビューアルバムで彼らが聴かせた音に型を求める人間にとっては今作は先に進み過ぎてしまったと感じている人もいるかもしれないが、中には "Starship Of Giants" のような楽曲があることからもわかるように、彼らの根底には古き良き時代のメロディアスなハードロックからの影響が今なおしっかりと脈打っていることはわかってもらえるはずだ。

正直に言うと今後彼らが FAIR WARNING の "GO!" のように安易にメロディアスな作風への回帰を果たすことで失速してしまわないかということが心配になってしまうのだが、逆に言えばそんな不安に駆られてしまうくらい今作の出来が凄まじいということの証拠なのだろう。個人的には彼らのような素晴らしいバンドがリアルタイムに愛せるバンドとして存在してくれていることを心の底から誇りに思う。

Score : 10 /10

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